FM三重『ウィークエンドカフェ』2014年2月15日放送

今回のお客様は、伊勢市二見町にある『和亭 朝日館』の女将、喜多好恵さん。
喜多さんは、現在、二見町で開催されている『おひなさまめぐり in 二見』実行委員会のメンバーでもあります。
町内に飾られているお雛様は、およそ6000体。
明治20年代にできた旅館街を、華やかに彩っています。

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■『おひなさまめぐり in 二見』を始めたきっかけ

伊勢では立春を迎えるとお雛様を飾って良いことになっています。
なので、毎年2月4日にお雛様を飾り、『おひなさまめぐり in 二見』を開催しています。
期間は約1ヶ月間、今年は3月9日までです。
最近では県内各所でおひなさまめぐりを行っていますが、町並みを見てもらう『町おこし』として一番最初に始めたのは二見。
今回で10回目となります。

寒くても1月は初詣のお客様が来られるのですが、2月3月はお客様が減る時期なんですね。
この町並みを見ていただくため、この時期になにをしたら良いか・・・と考え、始めたのが、このおひなさまめぐりでした。
もともと各旅館や商店などでも個々に飾っていたので、それを線で結んで、町全体としてお客様を御迎えしようと。
今年の参加店は95軒。
でも最初の年から83軒の方が参加してくださいました。
それまでは旅館は旅館、飲食店は飲食店と、バラバラな感じだったのが、みんなで「なんとかしよう」「お客さんに来てもらおう」という思いがつながったのだと思います。


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■始めてからもう10年

この町には、古くからの建物がたくさんあり、旅館や飲食店、おみやげものやさんが、軒を連ねます。
訪れるお客様の中には、修学旅行の思い出を重ねる人も多いですね。
情緒あふれるこの旅館街で、おひなさまめぐりが始まったのがちょうど10年前でした。

最初、みんなで始めようと決めてから、開催まで2ヶ月しかありませんでした。
特に年末年始の忙しい中だったので、実際の準備期間は1ヶ月なかったかもしれません。
でもまあ、みんなでやってみようという思いがあったので。
準備期間が短かったし宣伝する間もなかったのに、最初の年で3万人くらい来てくださいました。
来てくださるとうれしいし、地元のお年寄りがお客さんに二見の歴史などを話してくださり、それをまた喜んでいただけたり。
すごくみんなが活性化したというか・・・来年が待ち遠しくなるんですね。
手づくりの小物を作ろうとか、こんなものを並べてみようとか、アイデアが次々あふれてきて、大変だと思うより楽しかったです
ただいろんな準備があるので、実行委員のメンバーも10年経ったら10歳年をとるので、肉体労働はちょっときつくなってきました(笑)

「おうちにあるおひなさまを出して喜ばせてあげて下さい。たくさんの人に見てもらうことで、きっとお人形さんたちは嬉しいはずです」
イベントの最初の年、町の人たちにこう言ってお願いをしました。それから10年。
今年もさまざまなお雛様が飾られています。
やはり、それぞれの年代に寄って形式も作りも持ち物も違うんです。
でも、男性の方でも『おひなまつり』に関わっている方は、どの人形をどこに置くのかを、完璧に把握しているので、年々、非常に設置が早くなっています。
カタログを見るのではなく、覚えていますから。


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■生涯学習センターには1000体のおひなさま!

『賓日館』という資料館はもともと、建物自体は皇族たちの迎賓館として使われていたもので、素晴らしい作り。
ここには、昨年行われたご遷宮のために使われた木材の残りを神宮から譲り受けて、その木材を衣装に仕立てていただいた、『神木雛』というのがあるんです。
世界に3対しかない、お内裏様とお雛様。
おひなさまめぐり実行委員会に1対、神宮に1対奉納させていただいて、あと1対は、作っていただいた愛知県の吉浜人形さんに。
衣装が木目でわかるんですよ。
これはぜひ見ていただきたいですね。
他にも戸時代の雛から創作雛まで、本当に可愛らしいのがたくさんあるので、足を運んでみてください。

それから『二見生涯学習センター』には1000体の巨大雛飾りがありますし、地元の和尚さんの絵手紙が飾られています。
これが本当に素晴らしく、毎年これを楽しみに来られる方もいます。
他にも小学校の作品展や幼稚園の作品・・・実行委員会だけでなく地域のいろんな方の協力を得て作っているところなので、そういうところも見ていただきたいですね。

先日行われたオープニングイベントではマスコットキャラ、いわゆる『ゆるキャラ』の『ブージーくん』と『エルカちゃん』も登場しました。
夫婦岩近くの『二見興玉神社』のご祭神は猿田彦で、道開きの神、交通安全の神様なので、『無事に帰る』・・・カエルは縁起物だとされているんですね。そのカエルをモチーフとしたキャラクターが『ブージーくん』と『エルカちゃん』。今回はお内裏様とお雛様の格好をした2体のマスコットを、2mほどの大きなものをみんなで手づくりして、夜も光るように照明をつけました。
こちらは『二見生涯学習センター』に飾られています。


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■二見は禊の場所

二見はもともと禊の場所と言われており、伊勢神宮に御参りする前にこちらで身を清めるのが習わしだったそうです。
去年も『お木曳き』や『お白石持ち』に参加するためには、まず夫婦岩でお祓いをしないとなりませんでした。
それだけ身を清める場は大切なんです。
倭姫もここから五十鈴川をさかのぼり、天照大神のご鎮座の場を見つけられたので、伊勢に参る前に、まずこちらに来ていただきたいですね。

二見の海は日の出が有名ですが、あれは4月後半から8月の、夏の間・・・夏至のころです。
夏の間は日がのぼり、日が沈みますが、冬は月が昇り月が沈む。
これも西行さんが愛でて、歌にも詠んでいらっしゃいます。
海の風景も穏やかですし、住んでほんとうに良いところだと思います。

風のない穏やかな海は本当に気持ち良いです。
堤防でぼんやりするとか、夏は星空が本当に素晴らしいので、堤防に寝転んで星空を眺めてみてはいかがでしょう。

二見には大きな旅館はなく、家庭的でこじんまりとした宿が多いので、町が含んでいる懐かしさや暖かさをおみやげに帰っていただきたいですね。
この辺りの家の玄関には『蘇民将来子孫家門』と書かれたしめ縄が厄除として一年中飾られています。
伝説によると、蘇民さんは自分も貧しいのに、いらっしゃったスサノオノミコトを、自分の食べ物を削って歓待したそうなんです。
それこそがおもてなしの原点なんじゃないかな、と思いました。